『地球を歩く』(10)

ベトナム戦争でもそうだったんですよ、
毎日昼寝の習慣があるんです。
私が行くようになったのは1964年頃からでしたけども、
それから10年間にわたって三回行ってるんですけども、
それで従軍したりしてるんですが、
従軍しててゴム林の中を歩いてて、
昼飯を食う、
食い終わるとみんなそこで倒れて昼寝してしまうんです。
本当に昼寝するんです。
それではじめの頃は何のことやわからないで、
こんなことしてたら、
ここへ迫撃砲が一発落ちてきたらエラいことになる、
と言って騒いでるのは日本人の小説家だけなんですけども。
それでアメリカの士官をつかまえて、
「こ、これ何や?」と言うと、
「いや向こうも寝てるんや、俺も寝るよ、お前も寝たらどうだ」と言う、
それではじめのうちはイライライライラして寝ることも何ともできない、
そのうちにだんだんだんだん図太くなってきてですね、
飯食わぬさきから眠気がこみ上げてくるようなことになってきたんですが、
毎日が夜がなくて、
午後一時から四時まで時間だけしかあの国にはないということになれば、
永遠に戦争はありえない、
と言いたくなるくらいひっそり閑としてるんです。
田舎も街もですね。
犬も歩いていない。
そうゆう戦争なんです。
四時頃になると、
うわーよう寝たな、
ほんならいっちょやるか、
とゆうので戦争をやりだすんで、
付き合いきれないという印象がありましたな、
当時の間は。
だけどもその中へ入ってみるとそれが当たり前なんで、
そうゆう流儀でやってるんだと言うんです。
こうゆうこともなかなかわかりにくいことの一つです。

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