『地球を歩く』(9)

例えばユダヤ人とアラブ人が揉め事を続けておりますけれども、
このユダヤ人の建てた国はイスラエルですけれども、
ここへ行くと、
金曜日の夕方の一番星の出る時から、
明くる日の土曜日の夕方の一番星が出るまで、
これをシャバットと言いまして、
24時間、
火を使っちゃいけない、
外を出歩いちゃいけない、
働いちゃいかん、
それから火の入った料理を食っちゃいかん、
刃物使っちゃいかん、
あれいかんこれいかんで、
24時間ひたすら家に籠って、
本を読むか、
奥さんと愛し合うか、
冷めた料理を食べながらね。
こうゆうことになってる。

それでナチスの大佐がアルゼンチンで捕まってその後裁判が、
戦争裁判がエルサレムであって、
私はそれを傍聴に行ったんですけど、
毎週これなんです。
それでもうヒタッと猫も一匹も歩いていない。
それで原稿を書いてそれを至急送って、
東京の出版社に送らなきゃいけないんで、
私が原稿を持ってあたふたと駆け出してくるけれども、
空港まで走ってくれるタクシーがない。
散々エルサレム中歩き回ってやっと一台見つけて、
拝み倒して行ってくれと、
で飛び乗ってエルサレムから出ようとすると、
ユダヤ教のおじいさんですなぁ、
ひげを生やした、
これがやって来て、
道ばたの石ころを拾って、
よろよろしてるんです、
何をするんだろうと思ってると、
私の乗ってるタクシーにドカーンとぶつけて、
「シャバットの日にうろうろ出歩いている罰当たりがいる」と言っている。
運ちゃんも悪いということを承知の上だから、
「しょうがないなぁ」と言って、
おじいさんを怒鳴り返すこともなしに、
すごすごとそのまま行くんですけど。
戦争になったらどうするんやと言いたくなるんですけども。
一方イスラエルを攻めるアラブの方はアラブの方で、
毎日お祈りの時間が来るとひたすらお祈りをしてる。
両方ともはじめっからそればっかりやってたらいいじゃないか
と言いたくなるんですけれども。
終わると途端に銃の安全装置を外して、
さぁ戦争しようか、
これなんです。

こうゆうことになると私は本当にわからなくなるんで、
頭の中の地図からまたしてもわからない国が一つ出てきた、
と消していかずにいられないんです。

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