『地球を歩く』(18)

そうすると今度はプロペラが回りだしたら、
一列をつくって入り口から乗ったら、
そんなもん5分もせんうちに全員乗れるのに、
南米の人々には行列をつくるという考えが概念すらも成立していない。
ウワァーっと押し掛ける。
いくらヤクザなプロペラだって気流が激しいですから、
みんながバタバタっと落ちる。
でまたウワァーっとしがみつこうとする。
そんなことせんでも一列に並んだらいいじゃないかと、
カタコトのスペイン語でやるんですけれども、
みんなこんなことしてる。
それで乗り込んでやっと出ていくんですが、
滑走路をヨレヨレヨレヨレとあがって、
ジャングルの梢すれすれにこういく。
なかなか高くあがれないで、
何度も何度もあがって、
だんだんあがっていって、
それから上へいって、
ようやく飛んでいくという。

これがしばしば墜ちるんですね。
ホントに。
ボコタの旅館に荷物を預けといて、
それで帰って来てからたまった新聞…
私はスペイン語は耳学問だけしか知りませんが、
読むぐらいなら何とかたどれるんでみると、
「またDC3が墜ちた」といって、
で手配写真みたいなパイロットとスチュワーデスのかわい子ちゃんと、
乗客の写真がうすらぼけて写ってるんです。
それでその会社がどうやら私たちがボコタを出る時に、
あの会社にしようか、
この会社にしようか、
と迷うたその一つの会社だったとゆうことに気がついて、
こっちは何ということはない命拾いをしたというのでホッとするんですが、
行方不明になった飛行機の会社の名前がいいんですがねこれが、
「サテナ」というんです。
ホントですよこれは。
我々が乗ったのは、
「ヴェナド」というんです。
「サテナ」というんですがねこれは。
それで飛行機、
こんな飛行機に乗って墜ちたら、
今頃東京ではあの開高氏が行方不明になって、
魚釣りに行ったまま飛行機が墜落して死んじゃった、
ちなみにその飛行機会社の名前は「サテナ」というんである。
はじめは信じてもらえないで、
テレビのクイズ番組に出るぐらいじゃないかと思うんですけども。

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