『地球を歩く』(19)

でまぁかろうじて一命をとりとめたんですけれども、
そこからまた今度は、
降りた所から川岸まで行って、
ぺちゃくちゃしゃべって、
カヌーを一台チャーターして、
それで上流へ上流へとあがっていくわけです。
すると両岸は緑の万里の長城という感じで、
斧が入ったことがない、
ブルドーザーも入ったことがない、
所々にポツーンとこのインディオの部落がある。
部落というほどでもないんですけど、
2.3軒小屋がかたまっている。
でカヌーが結んである。
そのカヌーのお尻についている船外モーターが全部「YAMAHA」なんですね。
これはえらいこっちゃ、
ブラジル行った時に日本人と蟻はどこにでもいると聞かされたけど、
こんなアマゾンの上流にまでヤマハのセールスマンが入ってんのか、
これはエラいことになったと思って、
よくよく話を聞くとこれが実はですね、
コカインなんですね。

あの辺はコカインが出来る。
コカインは木にならないんですけど、
コカという木の葉っぱがあって、
この木の葉っぱはただの木の葉っぱであって、
誰にもケジメがつかない。
この木の葉っぱをちぎってきて、
塩酸か何かをぶっかけてドロドロにして、
それから何か実験室で機械にかけると白い粉が出来る。
コカインというやつです。
コカインのペットネームというか暗号というか略語は、
コークというんですアメリカでは、
コカコーラのコークと同じなんです。
茶色のコークと白いコークとがある。
液体のコークと粉末のコークがあるわけなんです。
これは覚醒剤です。

でコカの葉っぱそのものは猛毒じゃないんで、
これはジャングルに住んでいるインディオが、
お祭りや何かで一発気勢を上げたいと、
大きな猿が捕れて宴会が出来た、
おめでたいという時にはこのコカの葉を山と盛りあげて、
それをクチャクチャクチャクチャ噛んで、
カッカッカッカとなってきて、
それで踊ったり跳ねたりしてたわけです。
何千年何万年と。
それ自体別に中毒だの何だのと恐ろしいものではないんですが、
ケミカルにしてしまうとエラいことになってくる。
私もそのコカの葉っぱをやってみたことがあるんです。
市場へ行ったらいくらでも売ってるんですね。
ただの木の葉っぱです、
カサカサの。
こんなもの食ったって思うんで、
まぁ食ってみろと言うから、
むしゃむしゃむしゃむしゃ食うと、
何か青白くてどんよりした妙にパサパサした面白くないもんですが、
大分我慢して噛んでるうちにいくらかほんのりしてきてシャッキリなる。
という程度なんですね。

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