『地球を歩く』(27)

それで19世紀の中頃までですね、
アメリカで旅行鳩という鳩がいたんですが、
これはもう当時の記録を読み返してみると、
何億という数で、
数が知れなかったんです。
で旅行者が鳩が大群をなしてわたっていく、
その下を馬で歩いてたんだけど、
8時間かかってもまだその群れがつきなかった。
一日中空が暗かったとゆう風なことを書いてるんです。
鳩の群れのためにですよ。
これがたまたま肉がおいしかったんですね。
それではじめのうちは散弾銃で獲る、
トリモチで獲る、
投網ひっかけて獲る、
かすみ網で獲る、
だんだんだんだん大げさになって、
最後には大砲を持ち出してきたやつがいて、
大砲のなかに散弾を込めて、
ドカーンと発射すると、
何百羽というのがいっぺんに死ぬ。
そうゆう獲り方をして十羽ひとからげで一セントだったとゆう、
樽詰めにして売ったりしてたんです。

そうするとこれがもう一回の産卵期に卵一個しか産めない鳩だったんですが、
何しろ何億といるんでまだ大丈夫だと言ってるうちに、
最後の一羽がとうとうセントルイスだったか、
どっかの動物園で息を引き取ったんです。
これは動物が姿もなく音もなく、
姿を消していきますけれども、
絶滅というので、
最後の一羽が息を引き取ったのが見届けられている動物の一つなんです。
希有な動物なんです。
これはもう人間に手で回復のしようがない。
みんな当時大丈夫だ、
これだけいるんだ、
当分大丈夫だ、
と言って飲めや食えややってたわけです。
しかも鳩ですからなぁ、
主要食品とはいえない、
おいしいことはおいしいけれども、
彼らにとっての主食はビーフでしょうからね、
まぁおつまみ程度のもんだったんでしょうけれども、
それでもこんなていたらくになる。
バイソンもその運命になりかかったので、
慌ててナショナルパークをつくって保護にかかって、
今まぁいくらかづつ増えつつありますけど。

で今のうち大丈夫、
まだ大丈夫だ、
そんなこと言ってるうちに取り返しがつかなくなった例というのは、
無限にあるんで、
ひょっとしたらこのアマゾンのジャングルも、
俺が生きてる間よりはもっと早くどエラいことになんのんちゃうか、
ちゃうかじゃない、
現になりつつあるんですがね、
そこに住んでないから自分はわからない、
住んでてもわからない、
あんだけ広いんだからとおっしゃる。
あんだけ広いからといってとこう説明したって、
広さがわかってるもんだから、
話を受け付けない、
受け付けた人は今度は逆に、
あなた方は祖国の山野を犠牲にして、
自然を犠牲にして文明をつくった、
我々はそれをやっちゃいかんとおっしゃるのか、
とこうこられる。
そうすると返す言葉がない。
こうゆうことですわ。

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